Fantasista Mayumi / ファンタジスタまゆみ
何を、なぜ描いているのか。
6つの視点をめぐる旅と、一人のために描く2つの形。
6つの視点をめぐる旅です。世界の構図。視点の転換。境界と受容。魂の解放。世界中から集めた色。そしてRAINVOLUTION/Ka・Na・Me——今も続く実験。
その傍らに、目の前にいる一人のために描く絵——Inspiration ArtとNarrative Artがあります。
Six ways of seeing: the shape of the world, a shift in perspective, boundaries and acceptance, the soul unbound, colours collected from around the world, and RAINVOLUTION / Ka・Na・Me — the ongoing experiment. Alongside them: paintings made for the person in front of me, one story at a time.
01
私たちはいつの間にか、「これはこういうものだ」と世界を見ています。美しいとは何か。価値があるとは何か。普通とは何か。自分とは何か。
アートには、そんな固定された見方を一度ほどき、もう一度、世界を見る力がある。私は、作品を通して、自分自身や他者、そして世界を少し違う角度から見るきっかけをつくりたい。
An artist is a revolutionary of concepts. Without realizing it, we come to see the world as "this is simply how it is." What is beauty? What is value? What is normal? What is the self? Art has the power to loosen those fixed ways of seeing, even just once, and let us look at the world anew. Through my work, I want to create a moment — for myself, for others, for the world — to be seen from a slightly different angle.
02
2019年、「一人ひとりのために、絵を描いてみたい」という思いが芽生えました。目の前にいる一人の人のために描く。そこから、Inspiration Artを描き始めました。
デジタルで描くこともあれば、リアルな絵として描くこともある。表現する方法は変わっても、目の前の人のために描くことは、今も変わりません。
自分自身の世界を描くこと。そして、目の前にいる誰かのために描くこと。そのふたつは、今も私の制作の中にあります。
In 2019, a thought emerged: "I want to create paintings for each individual person." I began creating Inspiration Art for the person in front of me. The medium may change, but one thing has remained the same: I continue to create for the person in front of me. Creating my own world through art, and creating for someone standing in front of me — both remain part of my artistic practice today.
03
曼荼羅は、宇宙そのもの、世界の全体を表す形だと思う。感情には22の層があるという考え方に触れたとき、その全部を一つの曼荼羅として描いてみたい、という衝動が生まれた。
地球のような球体に、様々な感情を宿したきのこたちを描いた。悲しみも、恐れも、拒む必要はない。その全部を含めて、あなた自身。何一つ置いていかなくていい——すべての要素が、あなたを豊かで美しく、ユニークな存在にしている。
「すべての感情は尊く美しい」——理屈ではなく、見た瞬間にそう感じてもらえたら。
一作目から一年後。今度は空海が中国から持ち帰った胎蔵界曼荼羅に着想を得た。難解な密教の世界を、大衆にもわかるように伝えた空海のように、私はきのこという軽やかなモチーフでこの世界を構成するエネルギーを描き直した。
私たち一人一人は神聖な存在であり、その全体の中の一部である——それを、絵を通してつながり、実感できる装置として制作した。このシリーズはオーナー制を採り、今も各地の家に飾られている。
A mandala, to me, represents the whole — the universe itself. Sadness, fear — none of it needs to be rejected. All of it is you. Every emotion is sacred and beautiful — not as an idea to understand, but a feeling to receive at first glance.
04
もっと世界を面白がりたい。当たり前を疑ってみない?そんな提案をしたくなって、きのこを空に放ってみた。地に根を張るはずの存在が、360度どこへでも行ける自由な空を舞う——それだけで、世界の見え方が変わる。
見慣れた空を越えて、まだ見ぬ自分に会いに行く。飛行機の窓から広がる雲海に、そのきのこを連れ出してみた。自分の限界も、既成概念も飛び越えて、誰も見たことのない「アナザースカイ」へ。慣れ親しんだ場所を離れる時、そこには少しの怖さと、それ以上のワクワクする冒険心がある。
この視点のずらし方は、私自身の歩みとも重なっている。最初からアーティストになろうと決めていたわけではない。その時々に惹かれるものへ進んでいった結果、今ここにいる。私たちは皆、瞬間ごとにあらゆる可能性を持った存在だと思う。
こうして視点をずらす作品に触れた誰かが、自分の中に眠る可能性に気づき、少しだけ自分の枠の外へ踏み出す勇気を持てたなら。それが、この作品に込めた願いです。
I wanted the world to feel a little more fun. What if we questioned what we take for granted? Something rooted to the earth, moving freely through 360 degrees of open sky — that alone is enough to change how we see the world.
05
日本人は、自然と人工物のあわいをなじませるのがとても上手な民族だと思う。縁側や襖は、その代表的な装置だ。庭のあけびの葉に落ちる影があまりに美しくて、それを襖に描いてみようと思った。金柑や庭の記憶——それは同時に、家族の記憶でもある。健康や繁栄を願うということを、絵に込めて描けたことに、ある種の豊かさを感じた。
幻想の森のきのこたちには、感情を一切乗せていない。きのこは、地上に見えているものが全てではない存在だ。菌糸のネットワークで情報を分かち合う、四次元的な、植物ともまた違う曖昧な境界線上の生き物。だからこの森のきのこは、何かを象徴してはいるけれど、それ以上に、ただそこに存在している。誰にも制御されず、超越したまま在る——その姿そのものを描いた。
けれど「そのままで在れ」のきのこだけは違う。これは、私自身だ。ある舞台を見た時、自分が他者との関係の中でこじれてしまっていた部分に気づいた。その舞台が伝えていたのは、それぞれがそのままで存在していい、ということ。
多様性とは、きれいに調和することではなく、ただそのまま、混じり合ったまま存在すること。境界線を溶かすということは、何もかもを一つに調和させることではない。それぞれが、それぞれのままで、同じ場所に在っていい。そう思えた時、私はようやく少し、自分を許せた気がした。
Diversity isn't a tidy harmony — it's simply things existing together, unresolved and whole. To dissolve a boundary doesn't mean forcing everything into one harmony. Each thing can remain itself, in the same space as everything else.
06
個展の制作中、内側からエネルギーが湧き上がってきた。絵を描けること、それを表現できること、個展に誰かが来てくれること、手伝ってくれる人がいること——そのひとつひとつが、ありがたくて、幸せで。今まで気づけなかった優しさに、ふと気づけた瞬間もあった。それに気づけた自分が、なぜだか誇らしくて、嬉しくて——そこには、恋するような高揚感も混ざっていた。
私から溢れ出す喜びを、そのまま形にしたら、この絵になった。心がほどけ、魂がそのままの形で咲き誇る。そんな世界が、確かに広がっている。それを見せたかった。
虹(Rainbow)と革命(Revolution)——魂が花のように咲き誇り、あらゆる次元へ放たれていく。抑えることなく、ただそのまま弾ける喜び。これは、感情に理由を求めない絵だ。なぜ嬉しいのか、なぜ美しいのか、説明はいらない。ただ、心が動いた瞬間を、そのままキャンバスに置いただけ。
The heart unravels, and the soul blooms just as it is. That world truly exists — I wanted to show it to you. This painting doesn't ask for a reason behind the feeling. I simply placed the moment my heart moved, straight onto the canvas.
07
ずいぶん前に、青い絵を描いてほしいという依頼を受けていた。どうせなら、本物の地中海の青を見てから描きたい。そう思っていた矢先、日舞の先生から、小泉八雲の生誕祭にアーティストとして一緒に来ないか、とお誘いをいただいた。タイミングが、揃った。
これからも、たくさんの世界を見て、そこで自分が感じた色を表現していきたい。そう思い、2024年、これをプロジェクトにすることにした。世界で見たものを表現し、そしてまた世界へ向かう時は、日本人として誇りを持った表現者として、自分自身を放っていく。
第一章はギリシャ。地中海の青を、確かにこの目で見た。市長に絵を贈り、八雲の生まれた地の野外劇場に自分の絵を飾り、舞台にも立った。水絵という技法にも初めて触れた。2025年は与論島へ。日本の中にある、もう一つの青を探しに行った。
2026年はトルコ。国旗の赤——けれど見つけたのは、情熱の赤ではなかった。どこへ行ってもお茶が出てくる。「あなたたちが大好きだ」と、誰もが伝えてくれる。じんわりと染み渡る、友愛の赤だった。帰ってすぐ、描かずにはいられなかった。
次は香港、2027年1月。まだ見ぬ色が、そこにある。
Since 2024 I have been collecting colours from around the world, because experience is the source of my work. The blue of Greece, the blue of Yoron, the red of Türkiye. I am looking forward to meeting the next one.
08
RAINVOLUTIONは、虹(Rainbow)と革命(Revolution)を重ねた造語。色が、革命を起こしていく——そのイメージを2026年のプロジェクトの顔とした。
そして、その一年で大切にしたい要素を、8つの言葉に集約したのがKa・Na・Meだ。自分の中にある大切な要素を、言葉にしたもの。目には見えていない自分の内側を、アートとしてビジュアルに落とし込んだら、どうなるのか。それを確かめるための実験でもある。
色が付いているのが、これまでに描かれた4点です。
一人と一人が出会うとき、そこに生まれる響き合い。自分の調和から始まる、出会いと関わり合い。人と人がダンスをするときの呼吸の合わせ方のように、誰か一人が作るものではなく、関係性の中に、ふと気づかれるもの。花もまた、花そのものから煌々と光を放ち、まわりと影響しあいながら宇宙の中に在る。最初はピンクが浮かんで、抽象的な世界から少しずつ花へと変化していった。その変化していく時間そのものもまた、目には見えないハーモニー。
Ka・Na・Me is where the essential elements of the year come together, distilled into eight words. What happens when something invisible, something inside me, gets translated into visual art? This is an experiment to find out.
09
名前や写真、対話から
一人ひとりに、絵とメッセージを届けてきた活動です。これまで540名以上の方々へ、お名前や写真、対話の中に巡る息吹を感じ取り、降り立つひらめきを描いてきました。論理を超えてふと立ち現れるその人だけの輝きを可視化する作業は、私にとって愛おしいライフワークそのもの。
作品を見る対話から生まれる、キャンバスの絵
あなたとの対話からすべてがはじまる表現です。私ひとりから生み出すのではなく、お話を聞かせていただくプロセスそのものが作品の源泉。これから訪れる未来のお話と、いま踏みしめている現状に深く耳を傾け、その重なり合いから立ち現れる「未来の羅針盤」を可視化していきます。
ナラティブアートを見る
迷ったときは、主語で選んでください。「あなた」の物語なら、ナラティブアート。「私たち」の物語なら、Ka・Na・Meアート。
STAY YOU ── あなたのまま、進んでいい。